リム注視時にオクルージョンの生じない白円柱、赤と緑の非等輝度円柱、赤と緑の等輝度円柱を準備した。
 等輝度は被験者ごとに、二つの色の境がもっとも見えにくくなる輝度として測定した。この等輝度を用いたランダムドットを3dS-MAXを持ちいてテクスチャとして円柱に貼った
被験者が等輝度円柱のリムを注視しているときにも、オクルージョン知覚による両眼の動きが計測された。すなわち、赤と緑の等輝度でもオクルージョンを回避する行動が眼球運動で見られ、小細胞が両眼網膜像の不一致を検出していることを示すことができた

赤ー緑の等輝度ランダムドットで作成した円柱のリムを注視させたときに生じるオクルージョンによる回避行動

本文へジャンプ 2019 年4月1日
 立体視技術は、3D映画から医療に至るまで、幅広い分野で応用されている。立体視は、両眼の対応する網膜像間の水平距離に起因し、3D映画だけでなく日常生活においても奥行き方向を知覚するために使用されている。しかし、両眼視差を常に使用することはできない。なぜなら、手前の物体が奥の物体を隠し、左右の網膜像に異なる画像が投影される「オクルージョン」という状況のためである。ここでは、3種類のオクルージョンを挙げる。第1に、複数の物体がある時、手前の物体が奥の物体を隠す現象。第2に、物体の表面が自身でその面を覆って隠している現象、第3に物体に曲面があり、自身の曲面によって面が隠されており、左目と右目で見える部分と見えない部分がある現象である。
工藤らは特に3番目のオクルージョンに注目し、円柱のリム部を注視させる研究を行ってきた。円柱のリムで発生するオクルージョンを「リムオクルージョン」という。我々は、オクルージョンに起因する網膜画像間の不一致を避けるために眼球運動が起こったことを明らかにした。そして、被験者が円柱のリムを注視したときに注視位置が変化することを明らかとした[1][2]。

ここで紹介する研究では、オクルージョン知覚を伴う心理学的実験によって、工藤らの論文では触れられていない色度成分が網膜像の不一致検出に関わっているかどうかについて明らかにし、視覚野における小細胞の機能を解明をめざしたものである。

Reference
[1]H. Kudo, K. Uomori, M. Yamada, N. Ohnishi, and N. Sugie, “Shifts in Binocular Fixation Points Induced by Limb Occlusion,” ITE Journal, vol.47, no.8, pp.1115-1122, 1993.
[2]H. Kudo, K. Uomori, M. Yamada, N. Ohnishi, and N. Sugie, “Saccade Mechanism Based on Processes for Depth Estimation and Incongruity Detection between Binocular Retinal Images –Analysis of Gazing Positions and Inter-saccade Intervals–,” ITE Journal, vol.50, no.4, pp.465-474, 1996.
[3]Study on incongruence between binocular images when gazing at the rim of a column with equiluminance random dots,Shinya MOCHIDUKI, Reina WATANABE,Miyuki SUGANUMA, Hiroaki KUDO, Noboru OHNISHI,Mitsuho YAMADA,IEICE TRANS. FUNDAMENTALS   E101-A(6) 884-891   2018

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